ここ数年、心理的安全性に関する書籍が国内でも複数出版されるなど、組織のあり方への一つの視点として関心が高まっています。古くはSchein & Bennisの1965年の論文にルーツを持つ概念ですが、近年エドモンドソンの研究やGoogleのProject Aristotleにより着目され、弊社にも多くの問い合わせをいただくテーマのひとつとなりました。
心理的安全性は、ともするとそれ自体を高めることが目的化してしまいますが、本来は特に以下のような3つの視点において、それらを向上させるための、いわゆる媒介変数として意味を成すものです。
- リスクカルチャーの醸成、不正事案等リスクの未然防止
リスクマネジメントは、リスクの小さな芽にどれだけ早い時点で気づき、対応できるが重要となります。そうしたときに、「おかしい」と思ったことを自分への報復などを恐れることなく「おかしい」と声を挙げることができる状況かどうかが、そして、声を挙げれば適切な対応がなされる、という信頼があるのかどうかが、極めて重要となります。リスクマネジメントの第一歩は、安心して声を挙げられる組織風土といえます。 - 生産性の向上
従来の慣習や進め方に対して、「これまでこうだった」ということで押さえつけられることなく、メンバーが多様な側面から代替案を提示し、メンバー同士が健全に意見を闘わせることができる環境の整備は、非効率な業務プロセスの見直しにつながるものです。特に組織に潜む忖度や事なかれ主義を排する、といった風土に即した側面を変えていく上では、心理的安全性の担保が重要となってきます。 - イノベーションの創出
現状の見直し、新しいことへの挑戦が定着し、日常的に繰り返される中で、新しいことを学習し、イノベーションを生み出すことにつながっていく可能性が高まります。
上記のそれぞれを実現していくために、会社全体として、またそれぞれの組織がどのような心理的安全性の状態であるかを把握し、可視化することは、心理的安全性の高い組織風土を醸成する第一歩となるものであり、エンプロイーエクスペリエンス(従業員体験、通称EX)向上の観点からも重要であるといえるでしょう。
WTW従業員エンゲージメント調査の傾向から
心理的安全性の視点から弊社にご依頼いただき実施した従業員エンゲージメント調査の近年の結果を振り返ると、以下のような傾向がみえてきます。
- 心理的安全性に関連する項目が持続可能なエンゲージメントのキードライバーとなっていること
日本に本社を置く複数のグローバル企業において、特に昨年、「持続可能なエンゲージメント」のキードライバーとして、Wellbeingと併せて、心理的安全性に関する項目が特定される事例が日本企業においても増えてきています。 - 設問設計において心理的安全性に関連する項目を取り入れる企業が増加していること
グローバルの傾向として、たとえば組織内で声を上げることに関する抵抗感(’Security in speaking up’)の有無を尋ねる設問をサーベイに組み込んだ企業は40%近くと多くなりました。 - 心理的安全性に関連する設問一部で、スコア下落の傾向がみられること
グローバルの傾向として、組織において自分らしく振舞える、安心して発言できるなどの設問において前年よりもスコアの下落がみられ、直近3年の中で最も低い結果となりました。
こうした傾向は、従業員にとって心理的安全性が保たれた環境下で仕事をすることが重要な要素であるという事実を再確認させてくれるだけではなく、既に多くの企業がこうした風土や環境を創出するべく継続的なモニタリングを行っていることを示しています。以下では本テーマに関して弊社が皆様に対してどのようなサービスを提供することができるのか、その一端をご紹介します。
心理的安全性の現状を把握するためのアプローチ
当社の従業員エンゲージメント調査は、設問やカテゴリー別でのスコアの絶対水準だけにとどまらない多角的な結果分析を推奨しています。絶対水準を通じて「組織の中で何パーセントの方が各テーマを肯定的に捉えているか」を確認することは重要である一方で、自組織の結果は全社の中ではどのようなポジションにあるのか、あるいは、社外一般(他社)と比較した際の強みや課題はどこにあるのか、など、相対的な観点から結果を比較分析しなければ、組織の実態はなかなか見えてきません。
さらに、年齢や職種、役職などの属性という別の切り口で結果をみることで、組織の中でも、特にどのようなグループがその問題に直面しているのか、また個別の属性グループ特有の課題の存在有無など、より詳細な部分にまで分析の視点が及ぶということも利点です。これは心理的安全性を計測するうえでも同様で、社内外のベンチマークとの比較や属性分析、統計解析などを通じて一歩踏み込んだ現状の可視化に基づいて、特定の組織やグループに対する施策の検討を促します。







