
2024年の賃上げに向けて日本企業の各社が積極姿勢を見せるなか、賃上げ率が昨年同等の水準に達するのはほぼ確実とみられ、焦点はどの程度上回るかに移りつつある。ただ、こうした賃金上昇が実現しても、デフレ下で低迷した賃金からの正常化の兆しが表れているに過ぎない。衆目の一致するとおり、日本企業の課題は、生産性向上などを通じて賃上げの勢いを持続させられるかにある。報酬は取組みの結果である一方、成長実現の手段であるべきだが、継続的賃上げの実現のために報酬はどうあるべきか。
従業員の賃金については、物価上昇を考慮した実質賃金の上昇の市場競争力の確保という観点から、ベアなど一律の賃上げが会社や組合によって議論されている。ただ、他社を上回る財務力でもない限り「横並び」の域を出ることは難しく、将来の成長の実現という戦略的な狙いの実現には、もう一歩踏み込んだ取組みが欠かせないのではないか。限られた原資を活用し、重要人材の確保や個々の社員の成果の創出につなげられるかという発想から、具体的な施策を導きたい。ここでは、各社がある程度共通に検討し得る施策3つを例示する。
今回述べたうち、日本企業にとっては実現が容易ではない施策もあるだろう。一方で、他社を凌駕する良い機会と捉え思い切った施策を講じる日本企業が10年後にどの程度現れているか、注目してみたい。
ここ10年近くの間、経営者報酬は一貫して上昇してきた。2015年にコーポレートガバナンス・コードが導入されて以降、業績連動報酬の拡充、とりわけ株式報酬の導入促進によって水準は著しく上昇した[1]。従業員報酬はジョブ型導入ブームがあるとはいえ、水準は大きく変わらず今日に至っている。従前は、経営者と従業員の報酬水準に大きな差がないことをもって「全社的な一体感が醸成・促進される」とされたが、経営者報酬が変貌を遂げた今、「役員報酬」「従業員賃金」の関係性を見つめなおす時機が到来している[2]。
そうした中、「報酬の基本的な考え方」を経営層と従業員でどれだけ一貫したものにできるかが大手企業の報酬委員会においてもしばしば話題に上っている。そうした視点に基づく取組みとして例えば、経営層・従業員層問わず、市場に対する報酬水準の位置づけ(上位X%、パーセンタイル)について、比較母集団の顔ぶれも含めて揃える、といったことなどが考えられる[3]。
このような検討は、直ちに報酬戦略の差別化につながるわけではないが、階層を問わず報酬制度を一体的に運用することは、制度の方針をより明確なものとし深く浸透させるうえで有効に機能するだろう。
脚注
- 最近では事業・組織のグローバル化に伴い、大手企業中心にグローバル水準(=欧米水準)を意識した水準設定の動きも一部にみられる。 Return to article
- CEOと従業員の報酬水準の推移についてはこちらのリリースを参照されたい。 Return to article
- 経営層と従業員層で位置づけを変えるのであれば、その背景を整理することによって戦略的な意味合いも明確になる。 Return to article
