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賃上げ元年における日本企業の課題

筆者

森田 純夫
2023年2月14日

将来、2023年は賃金の観点からは大きな転機の年であったと振りかえられるのではないだろうか。春闘を控えるこの時期において経営トップが言及する賃金の上昇幅や、労使双方が賃上げに対して前向きであるという状況など、すべてが異例づくしといえる。少なくとも大手企業においては大幅賃上げが既定路線となりつつあるものの、この賃上げは日本企業が抱える多くの課題を浮き彫りにするきっかけにもなるのではないか。本稿ではその課題を概観したい。

図1. 年収水準の国際間比較

Source: WTW 2022報酬サーベイ

最後に

経営者に対しては、以前に比べて高額となった報酬に見合う形で業績の達成や成長が求められており、営業利益率やROE・ROICなどの利益率等の向上を目指すことが織り込まれていることも珍しくない。一方で、一律の賃上げや他社と横並びでのジョブ型人事制度の導入は、プラスの効果をもたらすどころか利益率の悪化を招くだけに終わり、目指す成長や事業戦略の実現を阻害しかねない。一時的な利益率等の悪化は不可避としても、賃上げによる人材への投資を伴いながら、事業ポートフォリオの見直しや大幅な生産性の向上、新たな付加価値の創出などによって中長期的かつ非連続な成長を実現することができるか。日本企業は一つの正念場を迎えている。


脚注

*1 日本において、日本企業と外資系企業との間でも差があり、日本企業はさらに低い。
*2 中間層における重層的な階層構造や兼務を多発させる組織設計・人員配置などは、日本企業における非効率な組織運営の象徴といえ、スリムかつ迅速な意思決定を可能とする組織を実現するうえでの課題である。
*3 日本市場においても、外資系企業が厚みを持った株式報酬を提示し、人材獲得に失敗するケースが散見される。
*4 日本のグローバル企業において、海外幹部との間での報酬交渉に至るとき、本社の上司(日本人)が直接的に交渉に乗り出す場面は限られ、多くは人事等に任せている。マネジメントからの報酬の分離といえる状況は、グローバル管理における日本企業の一つの課題といえよう。

執筆者

Photo of 森田 純夫

森田 純夫

Work & Rewards日本代表 マネージングディレクター

大手損害保険会社を経てWTW入社。国内外の経営者報酬制度・人事制度に関し、20年余にわたる豊富な実績を有する。その対象地域は、日本、北米・南米、欧州、アジア・オセアニアなど広範囲に及ぶ。グローバルな制度設計・運用支援やクロスボーダーM&Aに関する経験も豊富。