メインコンテンツへスキップ
Choose your location
Select the location and the language that you prefer

main content, press tab to continue

同じ規模で比べても、報酬設計は業種で分かれる ― 大型企業の変動報酬過半は輸送用機器76%、銀行業31%

WTW調査結果(シリーズ「変動報酬4ゾーンで見る日本企業の役員報酬」#6)

2026年7月29日

【プレスリリース / 東京】 2026年7月29日(水)-- 世界をリードするアドバイザリー、ブローキング、ソリューションのグローバルカンパニーであるWTW(NASDAQ:WTW)は、東証プライム市場の上場企業のうち調査対象期間内に有価証券報告書を提出した全1,546社を対象に、経営トップの変動報酬比率の業種別分布(同一の時価総額帯内での業種比較)について、有価証券報告書(2025年7月〜2026年6月提出の直近期分)の開示情報を用いて調査を実施しました。

経営トップの変動報酬比率の業種別分布を分析しました。変動報酬比率は企業規模と強く相関し、業種ごとに規模構成が大きく異なるため、単純な業種比較では規模の違いと業種の違いが混ざります。そこで本リリースでは、同じ時価総額帯の企業だけを取り出して業種を比較しました——大型(3千億円以上・493社)と中小型(3千億円未満・1,053社)の2つの帯です。その結果、同じ規模の企業同士で比べても、グローバル市場で事業と経営人材を競う業種ほど変動報酬化が進み、国内市場を主戦場とする業種ほど固定中心という構図が、どちらの帯でも明確に確認されました。業種ごとに報酬制度の進展度合いが分かれ始めています。

《 調査結果 》

  • 大型(時価総額3千億円以上・493社)だけで比べると、変動報酬過半の企業割合は輸送用機器76%(n=17)・電気機器70%(n=56)・機械66%(n=38)が上位、陸運業29%(n=24)・銀行業31%(n=36)・サービス業32%(n=19)が下位(帯全体57%)
  • 中小型(3千億円未満・1,053社)でも順位はほぼ同じ:輸送用機器38%(n=21)が最上位、銀行業6%(n=33)・食料品7%(n=44)・小売業9%(n=96)が下位(帯全体14%)
  • 同じ大型企業でも、輸送用機器76%と銀行業31%では約2.5倍、中小型では38%と6%で約6倍の開き
  • どちらの帯でも、上位はグローバルに事業を展開する製造業、下位は内需・規制産業と共通=業種間の差は企業規模の違いでは説明できない、業種固有のもの

図表1:同じ時価総額帯の中で比較した業種別の変動報酬過半企業割合(大型/中小型: サンプル15社以上の業種)

大型(時価総額3千億円以上・493社)だけで比べると、変動報酬過半の企業割合は輸送用機器76%(n=17)・電気機器70%(n=56)・機械66%(n=38)が上位、陸運業29%(n=24)・銀行業31%(n=36)・サービス業32%(n=19)が下位(帯全体57%)

図1-1 大型(時価総額3千億円以上)n=493

中小型(3千億円未満・1,053社)でも順位はほぼ同じ:輸送用機器38%(n=21)が最上位、銀行業6%(n=33)・食料品7%(n=44)・小売業9%(n=96)が下位(帯全体14%)

図B • 中小型(3千億円未満)n=1,053

【出所】

調査対象期間(2025年7月1日〜2026年6月30日)内に有価証券報告書を提出した東証プライム全上場企業1,546社の有価証券報告書(直近期分)に基づくWTW独自データベース「BoarDEX」(2026年7月12日版)。時価総額は2026年6月30日終値時点(出所:Yahoo!ファイナンス)。

【調査概要(定義・判定方法)】

  • 調査対象は、調査対象期間(2025年7月1日〜2026年6月30日)内に有価証券報告書を提出した全プライム上場企業1,546社。次の会社は調査対象に含まれない:①有価証券報告書の提出期限の延長を行っている会社 ②決算期変更の移行期にあり当期の有価証券報告書が制度上存在しない会社 ③新規上場等により調査対象期間内に有価証券報告書の提出がない会社 ④非公開化等により上場廃止となった会社 ⑤外国会社。また、同一の会社が普通株式に加えて優先株式・社債型種類株式などを上場している場合も、集計上は1社として数える(銘柄数ではなく会社数で集計)。
  • 経営トップ=対象事業年度の在任期間が最長の経営トップ(提出会社基準)。
  • 変動報酬比率=(短期インセンティブ+長期インセンティブ)÷(基本報酬+短期+長期インセンティブ)。セベランス(退職一時金)・退職慰労金・ベネフィット等の「その他報酬」は分母・分子とも算入しない。
  • 「変動報酬」は固定報酬以外(現金賞与+株式報酬等)を指し、業績条件のない株式報酬も含む。
  • 比率の特定は3段階:①報酬方針に開示された目標報酬ミックス(850社)②方針上の固定:変動比率(16社。レンジ開示は変動側上限)③経営トップの実報酬構成からの逆算(192社・推計)。いずれによっても特定できない488社は「比率不明」として最下段ゾーンに含める。
  • 全社のデータは有価証券報告書の原典(本文および図表)から取得し、合計検算・開示カバレッジ・外部ソース突合等の多段の品質検証を経ている。うち変動報酬比率90%以上と判定した会社については、数値が極端であることを踏まえ、原典に立ち返り1社ずつ追加の個別検証を行った。
  • 変動報酬比率は企業規模と強く相関するため、業種の比較は同一の時価総額帯の企業のみで行う(層別比較)。帯は大型=時価総額3千億円以上(493社)/中小型=3千億円未満(1,053社)の2区分。各帯でサンプル数15社以上の業種のみ表示(大型12業種・中小型17業種)。

《 WTWコメント 》

経営者報酬・ボードアドバイザリー(Executive Compensation & Board Advisory) 日本リード
シニアマネージングディレクター 櫛笥 隆亮

報酬制度の進展度が、業種で分かれ始めた

変動報酬比率の業種間の開きは、企業規模の違いの反映にとどまらない。同じ時価総額帯の中で比べてなお上位に並ぶのは、自動車、医薬、エレクトロニクスなど、製品市場でも経営人材の市場でもグローバルに競う業種である。海外の機関投資家との対話、海外子会社経営者との報酬の整合、国境を越えた経営人材の獲得——これらの圧力が、報酬設計を国内の慣行からグローバルの標準へと引き寄せている。報酬制度は、その企業がどの市場で戦っているかを映す鏡になりつつある。

国内産業の固定中心は「遅れ」ではない。ただし、理由は問われる

大型企業だけを取り出した比較で下位に並ぶのは、鉄道と銀行である(変動過半29%・31%=帯全体57%の半分程度)。規模では固定中心を説明できない。ただしこれは単純な遅れと断ずるべきではない。事業の時間軸、規制環境、人材市場の流動性など、業種固有の合理性がある。銀行業であれば過度なリスクテイクを抑える健全性の観点が変動報酬に慎重さを求める面もある。問題は、その設計が業種の合理性に基づいて選び取られ、その理由を株主に説明できるものになっているかである。国内市場の縮小が既定路線となる中、成長を海外に求める瞬間に、報酬設計もまたグローバルの人材市場に接続することを迫られる。その準備があるかが問われている。

結び ― 意思ある選択の時代へ

もはや、日本企業の役員報酬プラクティスは単一ではない。変動報酬が9割以上を占める設計から、固定報酬中心の伝統的な設計まで、一つの市場の中に、そして同じ業種の中にすら、大きく異なる設計思想が併存している。この多様性は、収斂すべき過渡期の乱れではなく、各社の戦略の違いを映す到達点である。だからこそ、各社に求められるのは業種の平均に寄せることではない。経営が、ガバナンスと報酬、経営人材の設計を自社の戦略に照らして自らの意思で選び、自社の言葉で語る。取締役会・報酬委員会が、スチュワードシップの視点からその選択を検証し、受け容れる。日本企業の役員報酬は、経営の意思とボードによる承認・支持(エンドース:Endorsement)——この両輪で語られる段階に入っている。


WTWについて

WTW(NASDAQ:WTW)は、企業に対し、人材、リスク、資本の分野でデータと洞察主導のソリューションを提供しています。 世界140の国と市場においてサービスを提供しているグローバルな視点とローカルな専門知識を活用し、企業戦略の進展、組織のレジリエンス強化、従業員のモチベーション向上、パフォーマンスの最大化を支援します。

私たちはお客様と緊密に協力して、持続可能な成功への機会を見つけ出し、あなたを動かす視点を提供します。

お問い合わせ

若山 卓也

マーケティング部門