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長期インセンティブのKPI、変動報酬が過半の企業ではTSRが首位 ― 固定中心の企業では営業利益・ROEが中心

WTW調査結果(シリーズ「変動報酬4ゾーンで見る日本企業の役員報酬」#3)

2026年7月24日

【プレスリリース / 東京】 2026年7月24日(金) -- 世界をリードするアドバイザリー、ブローキング、ソリューションのグローバルカンパニーであるWTW(NASDAQ:WTW)は、東証プライム市場の上場企業のうち調査対象期間内に有価証券報告書を提出した全1,546社を対象に、経営トップの変動報酬比率と長期インセンティブ(LTI)のKPI(業績評価指標)の関係について、有価証券報告書(2025年7月〜2026年6月提出の直近期分)の開示情報を用いて調査を実施しました。

経営トップの変動報酬比率4ゾーン(報酬方針の目標ミックスを中心に、補完的に実額からの逆算を加えた区分)別に、長期インセンティブ(LTI)のKPI(業績評価指標)に何が使われているかを分析しました(複数採用あり)。変動報酬の大きいゾーンほど、株主のリターンそのものであるTSR(株主総利回り)がKPIランキングの首位に立ち、変動報酬の小さいゾーンでは営業利益・ROEなど会計指標が中心となる——「変動の大きさ」と「何に連動させるか」が対応して選択されている構図が確認されました。

《 調査結果 》

  • 変動90%以上ゾーン(LTIの内容を特定できた9社):TSR 44%が首位。一方で業績連動なし(在任条件のみの株式)も33%=株式の「量」で変動性を作る設計が併存
  • 66〜90%ゾーン(同111社):TSR 46%が首位、ESG・サステナビリティ38%、ROE 32%が続く
  • 50〜66%ゾーン(同199社):ROE 42%が首位となり、TSR 38%、ESG・サステナビリティ34%が続く
  • 50%未満・比率不明ゾーン(同472社):営業利益33%が首位、ROE 29%、売上高19%と会計指標が中心。TSRは11%と少数派
  • TSRの採用率は変動過半の上位2ゾーン(44%・46%)と最下段(11%)で約4倍の開き
  • 市場・同業と比較する「相対TSR」の採用(ゾーン全社比)は 50%/34%/25%/4%

図表1:変動報酬ゾーン別 LTI(長期インセンティブ)のKPIランキング(採用企業割合・複数採用あり)

変動90%以上ゾーン(LTIの内容を特定できた9社)ではTSR 44%が首位。一方で業績連動なし(在任条件のみの株式)も33%=株式の「量」で変動性を作る設計が併存

90%以上ゾーン(LTIの内容を特定できた9社)

変動66〜90%ゾーン(同111社)ではTSR 46%が首位、ESG・サステナビリティ38%、ROE 32%が続く

66〜90%ゾーン(LTIの内容を特定できた111社)

50〜66%ゾーン(同199社)ではROE 42%が首位となり、TSR 38%、ESG・サステナビリティ34%が続く

50〜66%ゾーン(LTIの内容を特定できた199社)

50%未満・比率不明ゾーン(同472社)では営業利益33%が首位、ROE 29%、売上高19%と会計指標が中心。TSRは11%と少数派

50%未満/不明ゾーン(LTIの内容を特定できた472社)

【出所】

調査対象期間(2025年7月1日〜2026年6月30日)内に有価証券報告書を提出した東証プライム全上場企業1,546社の有価証券報告書(直近期分)に基づくWTW独自データベース「BoarDEX」(2026年7月12日版)。時価総額は2026年6月30日終値時点(出所:Yahoo!ファイナンス)。

【調査概要(定義・判定方法)】

  • 調査対象は、調査対象期間(2025年7月1日〜2026年6月30日)内に有価証券報告書を提出した全プライム上場企業1,546社。次の会社は調査対象に含まれない:①有価証券報告書の提出期限の延長を行っている会社 ②決算期変更の移行期にあり当期の有価証券報告書が制度上存在しない会社 ③新規上場等により調査対象期間内に有価証券報告書の提出がない会社 ④非公開化等により上場廃止となった会社 ⑤外国会社。また、同一の会社が普通株式に加えて優先株式・社債型種類株式などを上場している場合も、集計上は1社として数える(銘柄数ではなく会社数で集計)。
  • 経営トップ=対象事業年度の在任期間が最長の経営トップ(提出会社基準)。
  • 変動報酬比率=(短期インセンティブ+長期インセンティブ)÷(基本報酬+短期+長期インセンティブ)。セベランス(退職一時金)・退職慰労金・ベネフィット等の「その他報酬」は分母・分子とも算入しない。
  • 「変動報酬」は固定報酬以外(現金賞与+株式報酬等)を指し、業績条件のない株式報酬も含む。
  • 比率の特定は3段階:①報酬方針に開示された目標報酬ミックス(850社)②方針上の固定:変動比率(16社。レンジ開示は変動側上限)③経営トップの実報酬構成からの逆算(192社・推計)。いずれによっても特定できない488社は「比率不明」として最下段ゾーンに含める。
  • 全社のデータは有価証券報告書の原典(本文および図表)から取得し、合計検算・開示カバレッジ・外部ソース突合等の多段の品質検証を経ている。うち変動報酬比率90%以上と判定した会社については、数値が極端であることを踏まえ、原典に立ち返り1社ずつ追加の個別検証を行った。

《 WTWコメント 》

経営者報酬・ボードアドバイザリー(Executive Compensation & Board Advisory) 日本リード
シニアマネージングディレクター 櫛笥 隆亮

変動報酬が大きい企業ほど、株主と同じ物差しを選んでいる

変動報酬の比率を高めるとは、経営者の報酬を会社の成果に連動させ、その成果への責任を引き受けることである。本調査が示すのは、その「成果の物差し」がゾーンによって異なることだ。変動の大きい企業はTSR——株主が実際に手にするリターン——を首位に据え、ペイ・フォー・パフォーマンスを株主と同じ目線で規律づけている。一方、営業利益などの業績指標を選ぶことは、企業価値向上に向けて自らが主体的にコミットできる指標を選び取るという強い意志の表れであり、それ自体は尊重されるべき設計判断である。ただしその場合、企業は株主との対話において、その指標の伸長が真に企業価値の創造につながっているのか、目標設定が現実路線に流れて甘くなっていないか——株主と同じ目線に立っていると言えるのか——を自ら立証する義務を負う。変動を増やす議論の次には、必ず「何に連動させるか」と「それをどう説明するか」の議論が来る。

相対TSRはまだ少数派 ― 株主と同じ物差しの、その先へ

市場・同業と比較する相対TSRの採用は最上位ゾーンでも50%、最下段では4%にとどまる。米欧では市場インデックスや同業群と比較する相対指標が広く用いられ、機関投資家の議決権行使基準も業績連動の「質」を見る方向にある。絶対値のKPIは自社の努力を測るが、相対指標は「株主がその会社を選び続ける理由」を測る。両者の役割の違いを理解した上でKPIを組むことが、投資家との対話の質を決める。

「量で変動を作る」という選択

最上位ゾーンで「業績連動なし」の株式が一定数を占めるのは一見逆説だが、株式の量そのもので報酬を株価に委ねる設計思想の表れであり、創業経営者や外国人経営者を擁する企業に多い。是非は一概に言えない。重要なのは、それが意図を持った設計として説明できるかどうかである。KPIも、変動の大きさも——まず経営が自らの意思で選び、なぜその指標なのかを自社の言葉で語る。そして取締役会・報酬委員会がスチュワードシップの視点からその選択を検証し、承認・支持する(エンドース:Endorsement)。この二段構えが、報酬設計の次の標準になる。


WTWについて

WTW(NASDAQ:WTW)は、企業に対し、人材、リスク、資本の分野でデータと洞察主導のソリューションを提供しています。 世界140の国と市場においてサービスを提供しているグローバルな視点とローカルな専門知識を活用し、企業戦略の進展、組織のレジリエンス強化、従業員のモチベーション向上、パフォーマンスの最大化を支援します。

私たちはお客様と緊密に協力して、持続可能な成功への機会を見つけ出し、あなたを動かす視点を提供します。

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若山 卓也

マーケティング部門