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2026年改正によるDC掛金の限度額拡充について

執筆者 北野 昌志 | 2026年2月19日

2026年、確定拠出年金(DC)制度では企業型・個人型の双方で掛金の限度額が拡充されます。本稿では、改正内容の全体像と実務上の留意点を整理します。
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改正は 2026年4月1日 と 12月1日 の 2段階 で実施されます。

2026年4月1日改正:企業型DCの従業員掛金(マッチング拠出)の制約撤廃

これまで企業型DCの従業員掛金(マッチング拠出)には、「従業員掛金 ≦ 事業主掛金」という制約がありましたが、2026年4月から当該制約が撤廃されます。全体の拠出上限(事業主掛金+従業員掛金)は従来どおり月55,000円の範囲内です。

<変更内容>
表1:2026年4月施行・従業員掛金ルールの見直し
区分 2026年3月以前 2026年4月以降
従業員掛金の上限 事業主掛金を上回れない 制約撤廃
全体上限(事業主掛金+従業員掛金) 月55,000円以内 月55,000円以内(従前同様)

例:事業主掛金が20,000円の場合、従業員掛金の上限は20,000円 → 35,000円に拡大します(事業主20,000円+従業員35,000円=55,000円)。これにより、マッチング拠出を導入している企業では、全ての加入者が上限まで柔軟に拠出できるようになります。

※この時点では、(事業主+従業員)の合計上限は月55,000円のままです。

2026年12月1日改正:DC掛金限度額の引上げ(月62,000円)

2026年12月から、DCの掛金限度額は月55,000円→月62,000円へ引上げとなります。

※DCは翌月入金のため、実質的な適用は2027年1月拠出分からです。

あわせて、個人型DC制度(iDeCo)の掛金限度額に関する制約(企業年金の有無に応じ20,000円/23,000円)も廃止され、企業型DCでもiDeCoでも、同じ拠出限度額枠内での掛金設定が可能になります。

2027年以降の拠出限度額(制度別の整理)

下表は、2027年以降のDC掛金限度額を企業年金の有無・種類別に整理したものです。

表2:2027年以降のDC掛金限度額(企業年金の有無・種類別)
※iDeCo欄は厚生年金被保険者(第2号被保険者)の場合。第1号・第3号は取扱いが異なります。
企業年金の有無 DC掛金限度額(月)
企業型DC iDeCo(※)
事業主掛金 従業員掛金
(マッチング拠出)
無し 62,000円
DBのみ 62,000円-他制度掛金相当額
DCのみ 62,000円 62,000円-事業主掛金
DBとDC 62,000円-他制度掛金相当額 62,000円-他制度掛金相当額-事業主掛金

他制度掛金相当額とは、DB(確定給付年金)の給付水準を月額掛金相当に換算した額で、各社制度により異なります。

また2024年12月に他制度掛金相当額が導入された際に、経過措置を適用することで企業型DC制度の掛金限度額を他制度掛金相当額の金額に関わらず27,500円にすることが可能でした。2027年以降も引き続き経過措置を適用する場合は、これまで同様に27,500円がDC掛金の限度額になります。(iDeCoには経過措置が適用されません。)

経過措置を適用している場合の限度額の取扱いは以下のとおりです。

表3:経過措置適用時の掛金限度額の取扱い
表3:経過措置適用時の掛金限度額の取扱い
DC掛金限度額(月)
企業型DC iDeCo
事業主掛金 従業員掛金
(マッチング拠出)
27,500円 27,500円-事業主掛金 62,000円-他制度掛金相当額-事業主掛金

注:「他制度掛金相当額」の詳細、および経過措置の仕組みについては、下記リンクより当社過去記事もあわせてご参照ください。

実務上の留意点

上記の通り、企業年金の有無に関わらず、今回の改正は従業員の拠出可能額に必ず何らかの影響を及ぼします。企業の年金担当者様におかれましては、以下の観点で必要な対応をご確認いただくことが望ましいと考えられます。

①制度設計の見直しの検討

DC掛金枠が月7,000円増加することから、以下の2つの方向性で制度設計の見直しを検討する余地があります。

他制度掛金相当額を含め、事業主掛金として活用し給付水準を引き上げる

  • 特にポイント制退職金を採用している企業では、昨今のインフレ環境下で退職金の実質価値低下が課題となっており、給付改善の一手として有効です。
  • またDB制度の予定利率を引き上げると将来給付の割引率が上がるため、同じ給付水準でも月額換算した「他制度掛金相当額」が相対的に小さくなる可能性があります。昨今の金利環境や運用環境等を踏まえて予定利率を再考することで改正分とは別に企業年金で活用できる枠が広がる余地があるかもしれません。

従業員掛金として活用し、自助努力支援を強化する

  • 拠出枠拡大により、従業員自身が老後資産形成をより積極的に行える制度基盤が整います。福利厚生の強化やエンゲージメント向上の観点からも有効です。
  • また、今回の改正でマッチング拠出とiDeCoの上限枠が統一されましたが、iDeCoの最低拠出額は5,000円、マッチング拠出は企業が任意に下限設定可能であり、手数料負担の仕組みも異なります。これらの違いを踏まえると、マッチング拠出を未導入の企業にとっては、導入を検討する良い機会となり得ます。

②社内規定の改定

  • 退職金規程や確定拠出年金規約に「従業員掛金は事業主掛金以内」と明記している場合は、2026年4月改正を踏まえた修正が必要です。
  • 掛金限度額を「55,000円」と明記している規程も、2026年12月の改正に合わせて「62,000円」に更新する必要があります。(※実務上は「法令の定める額に従う」と記載する方法もあります。)

③従業員向け周知

  • マッチング拠出導入企業では、拠出可能額が変わるため従業員への周知が必要になります。特に改正が2段階で行われるため、それぞれのタイミングに応じた適切なコミュニケーション計画が求められます。
  • また、iDeCoも限度額が変わるため、マッチング拠出の有無に関わらず従業員からの問い合わせが増える事が予想されます。FAQの整備やイントラでの案内を準備しておくとスムーズです。

まとめ

今回の改正は、単なる拠出枠の拡大にとどまらず、企業の退職給付制度全体を見直す契機となり得ます。インフレの進行や金利水準の上昇など市場環境が大きく変化する中、総報酬戦略・リテンション戦略・財務戦略といった制度目的を改めて点検するとともに、従業員の長期的な資産形成ニーズへの目配りも欠かせません。こうした視点を踏まえ、拠出方針・周知・制度運営体制まで包括的に点検・整備することをお勧めします。

執筆者


ディレクター
リタイアメント部門

信託銀行にて年金数理業務等の経験を経てWTWに入社。退職給付制度の制度設計、年金ALMのコンサルティングや退職給付会計に関する評価業務など退職給付制度全般に関する様々なプロジェクトに携わっている。
年金数理人。日本アクチュアリー会正会員。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。


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