新型コロナウイルスは感染拡大から2年を超えてやや落ち着きが見られてきており、多くの国がロックダウンやマスク着用義務の解除などに動いています。一方、ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁をきっかけとしてエネルギーや食糧の供給に混乱が生じており、インフレ率の上昇とその対抗策としての各国中央銀行の利上げ政策などから、金利の上昇や為替レートの大幅な変動、株価の乱高下といった金融経済面での混乱が見られています。
このような中、日本の生命保険会社は2022年3月期において15社¹がエンベディッド・バリューを開示しています(本稿執筆時点)。エンベディッド・バリューの開示は計算方法や計算前提、変動要因分析や感応度分析等をまとめたエンベディッド・バリューレポートとして開示されるのが一般的ですが、経済価値ベースのソルベンシー規制への機運の高まりが意識される中、上場会社を中心に、エンベディッド・バリューやESR(経済価値ベースソルベンシー比率)についてさらなる分析をIR資料等で示す会社も増加してきました。
2022年3月末のエンベディッド・バリューの主な特徴は以下のとおりです。
- エンベディッド・バリューが増加した会社は11社、減少した会社は4社となりました。
- 新契約価値が増加した会社は12社、減少した会社は3社となりました。
- エンベディッド・バリュー計算手法を変更して、割引率の水準を変更した会社が1社ありました。また、リスクフリーレート(参照金利)を変更した会社が1社、補外について変更を行った会社が1グループ(3社)ありました。
- 新型コロナウイルスの感染拡大の影響に言及する会社が3社ありました。
- インフレ率前提の引き上げを行った会社が10社ありました。このうち7社は従来0%を使用していた状態からプラス値(0.1~0.2%)への引き上げとなりました²。
本稿では、これら15社のエンベディッド・バリューの開示内容の概要をまとめています³。
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脚注
注1 エンベディッド・バリューとして独立した開示を行っている日本の生命保険会社数であり、外資系生命保険会社による全世界ベースでの開示およびIR等における簡易な開示を除きます。また日本の生命保険グループ内での海外生保子会社数も除いています。
注2 補外部分を除きます。
注3 第一生命グループおよびT&Dグループは、長期保障事業(対象事業)に関して計算したエンベディッド・バリューに非対象事業を加えたグループエンベディッド・バリューも開示していますが、本稿では対象事業に関するエンベディッド・バリューを記載しています。
<目次>
- エンベディッド・バリュー開示の概要
- アプローチ・前提サマリー
- 経済前提
- 非経済前提およびその他の計算アプローチ
- 感応度分析
- 変動要因分析
コラム:追加的な情報開示
<資料ダウンロード>
タイトル | ファイルタイプ | ファイルサイズ |
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日本におけるエンベディッド・バリューの開示(2022年3月) | .6 MB |
執筆者
保険コンサルティング&テクノロジー部門
1999年に入社以来、日本の生命保険業界に関する広範な知識を有し、特に、エンベディッド・バリュー評価、合併買収、株式会社化、リスク・資本管理、国際会計基準第17号導入等を専門分野としている。日本アクチュアリー会正会員。
保険コンサルティング&テクノロジー部門
2008年の入社以来、合併・買収時の生保の企業価値評価、エンベディッド・バリューのレビュー、リスク・資本管理のアドバイス等、多数のプロジェクト経験を有し、生保の価値評価やリスク管理に関する講演も多数行っている。日本アクチュアリー会正会員、日本証券アナリスト協会認定アナリスト。