2022年度は、新型コロナウイルスの流行がオミクロン株中心となったことに加え、「みなし入院」の急増により、生命保険会社の給付が大幅に増加しました。一方、経済面では、特に海外において、インフレ率の上昇およびそれに対応する各国中央銀行の利上げ政策などによる金利の上昇や円安の進行が発生しました。日本においても海外のこのような環境変化に押される形で、2022年12月には日銀が長期金利の誘導目標の変動幅を緩和し、金利が上昇しました。
このような中、日本の生命保険会社は2023年3月期において15社[1] がEVを開示しています(本稿執筆時点)。EVの開示は計算方法や計算前提、変動要因分析や感応度分析等をまとめたEVレポートとして開示されるのが一般的ですが、経済価値ベースのソルベンシー規制への機運の高まりが意識される中、上場会社を中心に、EVやESR(経済価値ベースソルベンシー比率)についてさらなる分析をIR資料等で示す会社も増加してきました。
2023年3月末のEVの主な特徴は以下のとおりです。
- EVが増加した会社は9社、減少した会社は6社となりました。
- 新契約価値が増加した会社は9社、減少した会社は6社となりました。
- 補外について変更を行った会社が1グループ(3社)ありました。
本稿では、これら15社のEVの開示内容の概要をまとめます 。[2]
開示内容の詳細につきましては、本ページ下部の“資料ダウンロード“より資料(PDF:計18ページ)をダウンロードしてご覧ください。
<目次>
- エンベディッド・バリュー開示の概要
- アプローチ・前提サマリー
2.1 経済前提
2.2 非経済前提およびその他の計算アプローチ
- 感応度分析
- 変動要因分析
コラム:経済価値ベースの開示状況
<注釈>
- EVとして独立した開示を行っている日本の生命保険会社数であり、外資系生命保険会社による全世界ベースでの開示およびIR等における簡易な開示を除きます。また日本の生命保険グループ内での海外生保子会社数も除いています。 Return to article
- 第一生命グループおよびT&Dグループは、長期保障事業(対象事業)に関して計算したEVに非対象事業を加えたグループEVも開示していますが、本稿では対象事業に関するEVを記載しています。 Return to article
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タイトル | ファイルタイプ | ファイルサイズ |
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日本におけるエンベディッド・バリューの開示(2023年3月期) | .6 MB |
執筆者
保険コンサルティング&テクノロジー部門
1999年に入社以来、日本の生命保険業界に関する広範な知識を有し、特に、エンベディッド・バリュー評価、合併買収、株式会社化、リスク・資本管理、国際会計基準第17号導入等を専門分野としている。日本アクチュアリー会正会員。
保険コンサルティング&テクノロジー部門
2008年の入社以来、合併・買収時の生保の企業価値評価、エンベディッド・バリューのレビュー、リスク・資本管理のアドバイス等、多数のプロジェクト経験を有し、生保の価値評価やリスク管理に関する講演も多数行っている。日本アクチュアリー会正会員、日本証券アナリスト協会認定アナリスト。