【プレスリリース / 東京】 2026年7月21日(火) -- 世界をリードするアドバイザリー、ブローキング、ソリューションのグローバルカンパニーであるWTW(NASDAQ:WTW)は、東証プライム市場の上場企業のうち調査対象期間内に有価証券報告書を提出した全1,546社を対象に、経営トップの変動報酬比率について、有価証券報告書(2025年7月〜2026年6月提出の直近期分)の開示情報を用いて調査を実施しました。
経営トップの報酬に占める変動報酬(短期・長期インセンティブ)の比率で全1,546社を4つのゾーンに区分したところ、変動報酬が過半を占める企業は432社・28%にとどまり、90%以上に達する企業は10社であることが確認されました。一方、報酬方針・実額のいずれからも比率を特定できない企業が488社・32%を占め、報酬設計の開示そのものが引き続き課題であることも浮かび上がりました。変動報酬が9割以上を占める設計から固定報酬中心の伝統的な設計まで、一つの市場の中に大きく異なる設計思想が併存している実態が、開示数値の機械的な区分によって初めて全数ベースで可視化されました。
《 調査結果 》
- 目標報酬ミックス(固定:短期:長期の設計比)を報酬方針として開示している会社:850社(55%)/実額から推定できた会社:192社(12%)/どちらからも推定できない会社:488社(32%)(このほか、方針に開示された固定:変動の比率から特定できた会社が16社・1%)
- 変動報酬比率90%以上は10社(0.6%)、66〜90%は142社(9%)、50〜66%は280社(18%)=変動過半は計432社(28%)
- 変動50%未満は626社(40%)。比率を特定できない「比率不明」が488社(32%)
- 時価総額3兆円以上では62%が変動66%超(比率不明は2%)。3千億円未満では変動66%超は3%にとどまり、比率不明が41%を占める
- 規模との相関は強いが決定的ではない。最上位ゾーンには時価総額3千億円未満の企業も含まれる
図表1:東証プライム1,546社の変動報酬比率ゾーン構成/時価総額帯別分布
【出所】
調査対象期間(2025年7月1日〜2026年6月30日)内に有価証券報告書を提出した東証プライム全上場企業1,546社の有価証券報告書(直近期分)に基づくWTW独自データベース「BoarDEX」(2026年7月12日版)。時価総額は2026年6月30日終値時点(出所:Yahoo!ファイナンス)。
【調査概要(定義・判定方法)】
- 調査対象は、調査対象期間(2025年7月1日〜2026年6月30日)内に有価証券報告書を提出した全プライム上場企業1,546社。次の会社は調査対象に含まれない:①有価証券報告書の提出期限の延長を行っている会社 ②決算期変更の移行期にあり当期の有価証券報告書が制度上存在しない会社 ③新規上場等により調査対象期間内に有価証券報告書の提出がない会社 ④非公開化等により上場廃止となった会社 ⑤外国会社。また、同一の会社が普通株式に加えて優先株式・社債型種類株式などを上場している場合も、集計上は1社として数える(銘柄数ではなく会社数で集計)。
- 経営トップ=対象事業年度の在任期間が最長の経営トップ(提出会社基準)。
- 変動報酬比率=(短期インセンティブ+長期インセンティブ)÷(基本報酬+短期+長期インセンティブ)。セベランス(退職一時金)・退職慰労金・ベネフィット等の「その他報酬」は分母・分子とも算入しない。
- 「変動報酬」は固定報酬以外(現金賞与+株式報酬等)を指し、業績条件のない株式報酬も含む。
- 比率の特定は3段階:①報酬方針に開示された目標報酬ミックス(850社)②方針上の固定:変動比率(16社。レンジ開示は変動側上限)③経営トップの実報酬構成からの逆算(192社・推計)。いずれによっても特定できない488社は「比率不明」として最下段ゾーンに含める。
- 全社のデータは有価証券報告書の原典(本文および図表)から取得し、合計検算・開示カバレッジ・外部ソース突合等の多段の品質検証を経ている。うち変動報酬比率90%以上と判定した会社については、数値が極端であることを踏まえ、原典に立ち返り1社ずつ追加の個別検証を行った。
《WTWコメント》
経営者報酬・ボードアドバイザリー(Executive Compensation & Board Advisory) 日本リード
シニアマネージングディレクター 櫛笥 隆亮
「日本企業の役員報酬」を一括りに語れる時代は終わった
コーポレートガバナンス改革の10年余り、役員報酬の議論は「日本は米欧に比べ低く、固定的」という一枚の平均像を前提に進められてきた。本調査が示すのは、その前提の失効である。同じ東証プライムの中に、変動報酬9割以上の設計を宣言する企業と、固定報酬中心の伝統的な設計が併存し、その両端の距離は、もはや日米欧の平均値の差より大きい。平均値は実態を写さない。各社の報酬議論の出発点は「日本の水準はどこか」ではなく、「自社はどのゾーンにいて、それはなぜか」である。
開示の次の課題は「目標報酬ミックス」
報酬開示は年々拡充されてきたが、設計の核心である目標報酬ミックスを方針として開示する企業は850社・55%にとどまり、時価総額上位でも空白が残る。米欧の開示実務では目標ミックスは標準的な記載項目であり、機関投資家との対話の共通言語でもある。実額の開示から設計の開示へ。数値で設計を宣言できるかどうかが、報酬ガバナンスの成熟度を測る次の基準になる。
問われるのは「他社並み」ではない
この一国内の多様性を前提とすれば、各企業に問われるのは「他社並みかどうか」ではない。どのゾーンに立つのかを、経営が自らの意思として決め、自社の言葉で語れるか。そしてその選択を、取締役会・報酬委員会が株主から経営を預かるスチュワードシップの視点から検証し、承認・支持(エンドース:Endorsement)できるか。日本企業の役員報酬は、経営の意思表明とボードの承認がセットで問われる段階に入っている。
WTWについて
WTW(NASDAQ:WTW)は、企業に対し、人材、リスク、資本の分野でデータと洞察主導のソリューションを提供しています。 世界140の国と市場においてサービスを提供しているグローバルな視点とローカルな専門知識を活用し、企業戦略の進展、組織のレジリエンス強化、従業員のモチベーション向上、パフォーマンスの最大化を支援します。
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