プライベート・エクイティ(PE)市場において、セカンダリー投資は近年急速に成熟し、機関投資家にとって戦略的に重要な選択肢となっている。従来のPE投資は長期かつ流動性が乏しいという制約があったが、セカンダリー市場では既存ファンド持分の売買を通じて柔軟な資産運用が可能となり、PE投資のイグジット戦略に苦戦する投資家の流動性ニーズに応える手段として注目されている。
セカンダリー取引は主に、既存投資家(LP)がファンド持分を売却する「LP主導型」と、ファンド運営者(GP)が既存資産を新ファンドに移し、LPに現金化または再投資の選択肢を提供する「GP主導型」に分類される。近年では、優先株式型、ストリップセール、テイルエンドソリューションなど、手段の多様化が進んでおり、投資家のニーズに応じた柔軟な設計が可能となっている。
売り手の動機は多岐にわたり、流動性確保、ポートフォリオのリバランス、投資全般における方針転換、規制変更(例:バーゼルIII)などが挙げられる。一方、買い手は割安資産の取得、投資済みファンドによる「ブラインドプール」リスクの回避、分配の早期化、Jカーブ効果の緩和などを目的としている。特に、既に投資済みのファンドにアクセスできる点は、リスク管理の観点からメリットと捉える投資家が多いと考えられる。
市場動向を見ると、2022年にセカンダリー市場の価格が大きく下落した。これは、マクロ経済の悪化、上場株式市場の調整とPEのNAVの乖離、イグジット環境の悪化などが要因とされている。2023年には若干の回復傾向も見られるが、買い手は依然として慎重な姿勢を維持している。
セカンダリー投資を検討する際には、投資目的やリスク許容度との整合性、GPと既存資産の評価、売り手の動機の理解、将来のキャピタルコールと分配への対応、法的・規制的な条件(契約、報告義務、譲渡制限など)、NAVに基づく価格評価など、複数の要素を慎重に分析する必要がある。
WTWは、現在の市場環境において、セカンダリー投資は流動性確保とリスク分散の両面で有効な戦略となり得ると考えている。投資家にとって、既存資産へのアクセスや価格調整の余地がある点は魅力的な投資機会と言え、ポートフォリオの安定性と柔軟性を高める手段としてセカンダリー市場の活用を検討してみてはいかがだろうか。
※本稿はオルイン78号(2025年9月)への寄稿を転載したものです。
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日系通信会社でIT管理を担当後、日系・外資系投資顧問会社でリテール向け資産運用業務に従事。WTWでは企業年金のALM分析、運用戦略策定支援を担当。慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。早稲田大学大学院ファイナンス研究科にてファイナンス修士(専門職)取得。CFA協会認定証券アナリスト。