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定量評価の最適な評価期間

執筆者 木村 倫啓 | 2026年2月20日

アクティブ運用の定量評価に最適な評価期間は一概に定められず、短期実績のみでの判断は運用スキルを誤認する恐れがある。投資戦略に即した期間設定と、長期データやリスク指標、定性評価を組み合わせた総合判断が重要である。
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アクティブ運用の「パフォーマンスの最適な評価期間は何年か?」という質問を受けることがある。定量評価はわかりやすく結果が見えるため、ある程度の期間でマイナスの超過収益になっていると、見直しが必要ではないかと考え、何年で評価するべきか疑問に思うことは共感できる。

定量評価の最適な評価期間は、残念ながら一概に何年とはいえず、教科書的には「市場の1サイクルを含む中長期」等の抽象的な回答になるだろう。また、どのような期間をとっても、定量評価だけでなく定性評価を合わせて総合的に判断する必要があることは広く認識されているとおりである。一方で、実務上は明示的に3~5年を見直し期間として設定しているケースも散見される。これは、中期の定義として3~5年が納得できること、資産配分の見直しサイクルと一致すること等が理由だろう。本業にて中期経営計画や毎年の財務計画の予実管理に慣れ親しんでいる人であれば、期間を明確に区切り3年で見直すことに馴染みがある、といった側面もあるかもしれない。

しかしながら、アクティブ運用のスキル(真のアルファ)の存在やパフォーマンスの持続性については過去から数多くの研究がなされており、運用に携わる実務家として先人の知見をよく知っておくことは重要だ。学術研究はアルファの存在に否定的、肯定的なもの双方で数多くあるが、どちらにおいても短期のデータではスキルを識別できない点は共通の理解であり、5年やより長期のリターンでの検証が行われている [1]。また、わかりやすい実証研究として、過去3~5年に超過収益の上位だったファンドがその後の同期間においても上位にいる割合は高くないというデータも複数ある [2] この実証研究からたとえ3~5年であっても定量評価からスキルの有無を判断できないことは直感的に理解できる。

定性評価の重要性や数々の研究成果を認識しているにもかかわらず、3~5年の定量実績で判断を下す場合には、認知バイアスが生じているといえるかもしれない。最後に定量評価における認知バイアスを軽減するための対応をいくつか挙げたい。

  • 各運用戦略の投資の時間軸に整合的な評価期間を予め設定し文書化:

    短期の投資アイデアで超過収益を狙う運用者と長期の投資アイデアで超過収益を狙う運用者では必要な評価期間は異なる。
  • 類似の運用スタイル内での他社比較:

    該当スタイルにとって環境の良い時期、悪い時期の影響を考慮。
  • 採用前を含む長期の累積超過収益やローリングの超過収益を検証:

    特定時点や最近の印象のみで判断しないように、良い時期、悪い時期がいつ生じているかを可視化し、理由を記録。
  • リターンのみならずリスク指標の検証:

    アルファ獲得のためにはそれに見合うアクティブリスクをとっている必要がある。実績や推定のトラッキングエラーが想定内か、株式であればアクティブシェアの高さの推移等をみる。特定期間のリターンの結果論で判断しない。

<脚注>

  1. Carhart(1997), Kosowski et al.(2006), Fama & French (2010) 等 本文に戻る
  2. Vanguard (2022), SPIVA 本文に戻る

※本稿はオルイン78号(2025年3月)への寄稿を転載したものです。

執筆者


代表取締役社長(タワーズワトソン・インベストメント・サービス株式会社)
インベストメント部門

KPMGにて国内外企業の監査業務に従事後、米国UBSの富裕層向け資産運用業務に関与。弊社入社後は企業年金等の資産配分・運用戦略策定等のコンサルティング及び運用リサーチを担当。2018年より日本のインベストメント部門を統括。一橋大学経済学部卒業。CFA協会認定証券アナリスト。公認会計士。


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