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特集、論稿、出版物 | 企業リスク&リスクマネジメント ニュースレター

分析を用いたポートフォリオリスクマネジメントの最適化に向けた前提知識と実施手順

2025年12月24日

ポートフォリオリスク分析を活用し、リスク管理の枠組に組込むことで、種目毎の個別最適から全体最適の観点でのコスト効率化を実現すると共に、保険市場の変動に対応しつつ企業戦略と整合した効率的なリスクマネジメント戦略の策定が可能になります。
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リスク分析を活用して企業全体のリスクポートフォリオを最適化することで、変化の激しい保険マーケット環境においても主体的かつ効果的・効率的にリスク資本を配分する事が出来ます。

保険市場においては、全てのリスクが同じ価格で評価される事は無く、リスクの種類(財物リスク・賠償責任リスク等)に応じて異なる価格で評価される事が一般的です。

保険料が下落する局面においては、ある保険種類は他の保険種類と比較して安価になる場合があり、保険料が下落した保険種類においては、免責額の引き下や支払限度額を引き上げることで、より多くにリスクを移転したいと考える一方比較的保険料が高い保険種類においては、保険料削減の観点から、免責金額の引上げや支払限度額の引下を行う事による自己保有リスクの増額や、リスク軽減策を実行する事が多いものと考えられます。

しかし、ポートフォリオリスク分析を活用せずに、リスクを依然として個別リスク単位で管理をする場合、このような保険種類を横断した保険料の最適化を行う事が出来ません。

弊社のポートフォリオリスク分析、リスク許容度を設定した上で、リスク軽減・リスク保持・リスク移転の組み合わせを検証し、、企業に必要な補償内容を適切なコストで実現する戦略を導く事が出来ます。

この手法は経営戦略の一つであるリスク資本の戦略的な配分であり、リスク資本をより適切に配分する事により、リスクマネジメントの可視化を通じて企業価値とレジリエンスの両方の向上をもたらすものになります。

リスク資本の戦略的な配分を実現するため、今回のインサイトにおいては分析を活用したリスクポートフォリオ最適化に向けた5つのステップを説明します。

ステップ1:企業のリスク許容度とリスク選好を決定する

リスク資本の戦略的な配分の実現に向けては、リスクマネジメントの目的を企業の財務上の目標と整合させるため、企業リスク許容度(受け入れ可能なリスクのレベル)とリスク選好(戦略目標達成のために取るリスクの量)を明確にする事が重要になります。これらを設定する事により、保険コストが自社のリスクに対して過剰になっていないか、又は自社を過度なリスクに曝していないかを判断する事が可能になります。

リスク許容度と選好を明確化するため、取締役会、経営陣、部門横断の責任者など、組織全体のキーパーソンとの連携が必要不可欠になります。全社横断的な連携により、各事業の詳細なリスク実態を把握すると共に、各部門や経営層が同じ基準でリスクを評価し、リスク管理の一貫性と透明性を確保する事が出来ます。

これらの指標を定義したら、リスク許容度とリスク選好のパラメータを文書化し、次のステップに進む前に組織全体のキーパーソン全員が同じ認識を持てるよう共有することが重要です。

これらのパラメータを定義するだけで事業価値を生み出した事例もあります。

事例:ある欧州の複合企業は、特定の事業セグメントで極めて高いリスクにさらされていました。そこで、取締役会はリスクマネージャーと協働してリスク許容度とリスク選好を決定したところ、その事業セグメントのリスクがリターンに見合わないほど高いことを認識。同社はそのセグメントから撤退を決定し、企業全体のリスクエクスポージャーを大幅に削減して、企業の戦略目標に沿った体制を整える事が出来ました。

ステップ2:潜在的なリスクをすべて特定し、影響度と発生可能性に基づいて優先順位を付ける

リスクと保険のポートフォリオを最適化する次のステップは、包括的なリスク評価です。分析を活用することで、リスクを特定・分類し、最も重要なものを明らかにできます。

弊社のリスク分析により、各リスクの影響度と発生可能性を評価できます。影響度とは、リスクがもたらす潜在的な財務的な影響度合いを意味し、発生可能性はそのリスクが起こる確率を意味します。

事例:ある航空会社は包括的なリスク評価を実施したところ、悲観的シナリオにおいて、事故防止対策及び保険による対応をしても回避出来ないリスク(残余リスク)の89%が航空関連ではないことが判明。この結果から、航空会社は非航空リスクにリスク管理を集中させ、財務レジリエンスを強化すると共に、結果として数百万ドルの保険コストの節約を実現しました。

ステップ3:高度な分析を用いて特定したリスクの潜在的な財務影響を定量化する

損失シナリオをシミュレーションし、リスクの影響度と発生可能性を定量評価することで、リスク保有・軽減・移転のどの組み合わせが最も効率的であるかを評価する事が出来ます。

弊社の分析サービスでは、過去の事故実績、事業内容、同種の業界データを分析し、事故によって発生する損害額及び発生可能性、損害額の長期的な平均値等を定量的に算出します。また、複数の保険種目を包括的に分析する事により、リスク間の相関性を認識する事が可能になり、保険種類を横断した保険料の最適化に活用する事が出来ます。

事例:欧州の製造業者は弊社の保険横断型の包括的なリスク分析を活用し、保険ポートフォリオ全体で約1,000万ドルのリスクコストの削減可能性を把握。この分析により、これまで保険種目毎で分析・検討されていた免責金額や保険料に関する意思決定を、保険種目横断的な観点に改善され、結果としてリスクファイナンスを最適化し、保険コスト総額の削減を実現しました。

ステップ4:リスクファイナンスを最適化する戦略を策定・実行する

リスクの潜在的な財務的影響を定量的に把握する事により、リスクファイナンスを最適化するための戦略を策定・実行できます。これには、実際に損害の回避及び軽減を可能にするリスク軽減策や管理方法の導入から、再保険を活用した保険による外部移転手法の検討、更には高額な免責金額の適用・キャプティブを活用した自家保険の活用など、包括的なスキームの検討になります。

自家保険:保険を付保する代わりに将来の損失に備えて資金社内に積み立てるリスク保有の手法であり、発生頻度が高いものの1件当たりの影響度が低く、毎年一定額が定常的に発生しているリスクに対して費用対効果が高い場合があります。

キャプティブ:自家保険を活用したリスク保有手法の一つの形態であり、自社グループ内に自社グループのリスクを引受ける保険会社を設立し、元受保険会社から再保険契約の形態でリスクを引受けることにより、自社リスクを保有する事と同時に、元受保険会社に支払った保険料を自社グループに還流させることが出来ます。自社グループに保険料を還流させることにより、保険料上昇局面において保険コストの増加を緩和する事が出来ます。また、保険会社を設立する事により、グループ横断で保有するリスクの管理を強化する事が出来ます。

事例:ある多国籍製造業者は分析を通じて、これまで保険会社に支払っていた年間約7,500万ドルをキャプティブに還流させることにより、保険コストの削減のみならず、企業グループ全体で戦略目標に整合したリスクの移転と保有のバランスを実現する事が出来ました。

最適な軽減・移転・保持の組み合わせを特定したら、理論上の保険の最適化戦略を現実の保険マーケットで実現するために国際ブローカーと連携する必要があります。

ステップ5:ポートフォリオリスク管理の枠組みを定期的に見直し・更新する

ポートフォリオリスク分析を活用し、リスク管理の枠組みを定期的に見直すことで、保険市場の変動に対応しつつ企業戦略と整合した効率的な戦略を策定できます。さらに、保険種目を横断的に管理することで、種目毎の個別最適から全体最適の観点でのコスト効率化を実現します。

ポートフォリオリスク管理及び導入方法についての詳細については当社のリスク&アナリティクス専門チームまでお問い合わせください。

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お問い合わせ


関口 大樹
リスク & アナリティクス
キャプティブ
アソシエイト ディレクター

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