強風や雹による直接的な被害に加え、激しい対流気象は、また、極端なまたは広範囲にわたる洪水の引き金となる可能性があります。4月初旬に中央グレートプレーンズを横断した暴風は、150個以上の竜巻を発生させ、アーカンソー州、テネシー州、ケンタッキー州で記録的な洪水を引き起こし、この地域の道路は寸断され、橋は破壊されました。この地域における洪水保険の普及率の低さは依然として根深い問題であり、保険による補償の格差がこれ以上拡大するのを防ぐには、新たなアプローチが必要になる可能性があります(レポートのSection2.3)。
最近のサイクロンは前例がないわけではないが、それでも異常
世界的に見ても、北半球の夏は熱帯低気圧の活動が最も活発な時期ですが、2025年はすでに多発する年であることが証明されています。太平洋のハリケーンシーズンは、メキシコに史上最速で上陸したハリケーン(6月19日のハリケーン・エリック)をかわきりに、早くもスタートしました。インド洋南西部では、2024/25年のサイクロンシーズンは、1967年の統計開始以来3番目に活発で、モザンビーク、マラウイ、マヨット島を襲ったサイクロン・チドは、甚大な被害をもたらしました。また、オーストラリア地域では、2005/06年以来最も活発なサイクロンシーズンとなり、18年連続の平均またはそれ以下の活動状況に終止符を打ちました。
歴史的に、オーストラリアにおけるサイクロンの上陸は、北部沿岸に集中しています。しかし、50年ぶりに、熱帯低気圧が南部のブリスベンとゴールドコースト付近に上陸しました(レポートのSection2.4)。サイクロン・アルフレッドは推定26億豪ドルの保険事故をもたらしましたが、近年の熱帯暴風雨に対する経験不足と、新築住宅の耐風基準の低さが損失を拡大させたと考えられます。気候変動により熱帯低気圧の南下が進むことが予想されるため、サイクロン・アルフレッドの影響は、将来同様の事象がより頻繁に発生する可能性への備えを促すものとなるでしょう。
高緯度地域は温帯低気圧の領域ですが、これは非常に大きな低気圧系で、気温や湿度の急激な変化を引き起こします。今のところ、2025年の最も強力な温帯低気圧は、1月24日と25日にアイルランド、イギリス、ノルウェーを襲った嵐エオウィンです(レポートのSection2.5)。エオウィンはアイルランドで観測された最大風速の新記録を樹立し、1959/60年の冬以来ブリテン諸島を襲った最も強いサイクロン(最低気圧で測定)となりました。風による被害で発生した停電により、100万人以上が影響を受けましたが、もし強風が高潮と重なっていた、あるいはベルファストやダブリンに近い経路をたどっていたら、被害は間違いなくもっとひどいものになっていたでしょう。
地震波の到達距離が長い
地表の突然の揺れは、気象災害ほど頻繁に発生するものではありません。しかし、震源からかなり離れたところであっても甚大な被害をもたらす可能性があり、その影響は軽視できません。。 3月28日にミャンマーを襲ったマグニチュード7.7の地震は、5,000人以上の死者を出し、1930年以降ミャンマーを襲った最悪の地震となりました(レポートのSection2.6)。この地震は、震源地から1,000キロ以上離れたタイのバンコクでも激しい揺れを引き起こし、建設中だった30階建てのビルの突然の倒壊につながりました。この遠距離で発生した大惨事は、リスク評価において広範な地理的視点を取り入れ、地域の地質が遠方の地震の影響をどのように増幅させるかを理解することの重要性を改めて認識させてくれます。
近い将来
科学的な知見に立脚した巨大自然災害の研究は、ハリケーン、地震、雹(ひょう)害、その他の主要な災害の原因を解明し、それらの発生可能性と潜在的影響を正確に予測することを可能にします。また、一部の災害については、重要な先行条件に関する知見を活用することで、3~6か月(あるいはそれ以上)先までその発生を予測することも可能です。
北大西洋におけるハリケーン活動に関する最新の予報では、2025年も嵐の多いシーズンになると予想されています(レポートのSection3.1)。北大西洋の気温は昨年ほど異常に高くはありませんが、ほとんどの予報グループは11月末までに7~9個のハリケーン(大型ハリケーンであれば3~4個)が発生すると予想しています。しかし、ジェームズ・ドーン博士(米国大気研究センター)が展望記事で指摘しているように、上陸率や発生場所を予測する能力は依然として限定されているため(これらは最終的には嵐の数よりも保険損失や経済的損害に関連します)、来たるハリケーンシーズンの全体像を予測する際には注意が必要です。
幸いなことに、科学界は太平洋の将来の動向を数ヶ月前から予測することに成功しています。レポートのSection3.2では、コロラド大学ボルダー校のペドロ・ディネジオ教授が、エルニーニョとラニーニャの予測を最大限に活用する方法についてアドバイスを提供しています。これらの知見は、アジアやアメリカ大陸の熱帯地域に重点を置くリスク管理者にとって特に重要です。これらの地域では、地域の気象とエルニーニョおよびラニーニャの関連性が年々強くなり、信頼性も高まっています。
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