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世界で最も脆弱な国のパターンを分析する

2023年8月21日

今回のポリティカルリスクインデックスでは、世界中の国を悩ませているインフレと生計費の危機に注目します。
Credit and Political Risk
Climate Risk and Resilience|Geopolitical Risk

高いインフレは経済的コストだけでなく、社会的、政治的コストももたらします。 私たちの最新のポリティカルリスクインデックスでは、エネルギー価格の上昇と団体交渉協定への依存度の高まりが、抗議活動の激化に関連していることが判明しました。 この調査結果は、ヨーロッパ諸国が2022年と2023年に最も大規模な生活費抗議活動を経験し、インフレが高水準にある間も同様の活動が続く可能性を示唆しています。

このインデックスの創設以来、一貫して重視されてきたのは、新興国の政治リスクに焦点を当てることでした。 しかし、富裕国においても二極化や不安の高まりなどの傾向が明らかな昨今、従来の前提が疑問視されています。

この新たな傾向は、保険業界にとって特に課題となっています。なぜなら、内乱による脅威が増大しているこれらの豊裕国は、当然のことながら損害保険のエクスポージャーが世界で最も集中している地域でもあるからです。

インフレ環境におけるリスク移転

もちろん、企業もインフレによって深刻な影響を受けます。 コストの高騰(給与インフレ、エネルギー、保険など)を考慮すると、どの国でもあらゆるリスクを移転する余裕のある組織は存在しません。では、どこから始めればよいのでしょうか?

どのような組織も、リスクと利益の間、株主利益の保護と株主利益の最大化の間での絶え間ない戦いに直面しています。 海外の運営施設や国際的なサプライチェーンなどのグローバルな要素を加味すると、その利害関係は更に増加します。 そのため、企業は新たなリスクを事前予測し、それが現実になった場合の対策を事前に計画できる必要があります。

あらゆる組織にとっての最初のステップは、直面する潜在的なリスクの全容を俯瞰することですが、事業運営に影響を及ぼすリスクの範囲が広いことを考えると、これは簡単な作業ではありません。 多くの場合、リスクマッピングに着手するに際し内部利害関係者の同意を求めることは、リスクマネジメントの最も難しい部分ですが、組織全体のリスク俯瞰を先導し、共有することには間違いなく価値があります。

自社の事業領域を確定次第、リスクの優先順位を決定する必要があります。 企業はどのようなリスクを安心して引き受けることができ、どのようなリスクを取りたくないのでしょうか? 後者のリストのうち、ビジネスとその多くの利害関係者の観点から見て、どのリスクが優先度の高いリスクでしょうか? これらのリスクこそが、企業が対処しようとしているリスクです。

ポリティカルリスク保険は任意の補償です。 任意保険における課題は、ほとんどの企業が手遅れになってからしか軽減策を考えないことです。 (リスク顕在化後に)企業がポリティカルリスク保険の購入を決定する頃には、(自社の株主を同様に考慮しなければならない)保険会社は引受保険料率を上げるか、補償の検討を停止しているでしょう。

ロシアとウクライナの紛争の文脈でポリティカルリスク保険を考えてみましょう。 2021年後半には保険が広く利用可能でしたが、2022年2月に紛争での武力衝突が始まると、保険の利用可能額は一気に枯渇しました。 これは、企業が保険を購入しいた場合に補償がなくなるということではありません(ポリティカルリスク保険はまさにこの理由から保険会社によって期中キャンセルできません)が、保険会社はもはやこれらの地域で追加のリスクを引き受けることができなくなりました。

地政学的な緊張の高まりにより、2つの独立した傾向が浮き彫りになっています。 1つ目は、企業がこれまで以上に地政学的リスクを認識しており、補償を求めて保険市場にアプローチしていることです。 2つ目は、(地政学的リスクを独自に監視している)保険会社が、最もリスクが高いと思われる国々の保険料率を引き上げたり、補償内容を縮小・制限し始めたことです。

それでは、どの国がリスク管理に重点を置くべきでしょうか?

10年以上前、当社は主要な新興国におけるポリティカルリスク(※保険化可能な地政学リスク)のレベルを追跡調査するために、「ポリティカルリスクインデックス」を立ち上げました。 私たちは確率論的な考え方を活用し、各国の相対的ポリティカルリスクをリスクの種類ごとに偏差値表記します。

顧客が「赤色(危険)な国」で事業や利益を有している場合、自社が晒されているリスクを再検証のうえ、どのような保険オプションがどのくらいの価格で利用可能であるかを(※リスク顕在化前に!)見積もる必要があります。 しかし、最近の出来事は、黄色がすぐに赤色に変わる可能性があることを示しているため、優位性を維持するには、黄色評価の国も、上昇傾向にある国と同様に考慮する必要があります。

私たちの最新のインデックスでは、黄色国(政治的動機に基づく抗議活動のみに基づくだけでも)は、アンゴラ、アルゼンチン、アゼルバイジャン、ブラジル、カンボジア、カメルーン、コロンビア、エジプト、エチオピア、ガイアナ、インド、インドネシア、イラン、イラク、コートジボワール、ヨルダン、カザフスタン、ケニア、ラオス、マリ、メキシコ、モロッコ、モザンビーク、ナイジェリア、ペルー、フィリピン、サウジアラビア、セネガル、南アフリカ、タイ、ウガンダ、ウズベキスタン、南アフリカです。

また、リスクインデックスが上昇傾向(※赤に近づきつつある)にある国は、アルゼンチン、チャド、エクアドル、エジプト、ガイアナ、ケニア、コンゴ共和国、トルクメニスタン、ウガンダ、ウズベキスタンです。

企業が赤色または黄色の国々、或いはリスクが上昇傾向にある国々で事業を営む場合、どのような財務的損失が発生する可能性があるか、さらに悪化した場合に何が起こるかを理解することはポリティカルリスクマネジメントの本幹です。 また、リスク軽減・緩和対策にかかるコストも予め見積もる必要があるでしょう。

今日の黄色のリスクが明日の赤いリスクになる可能性は簡単にあります。そのため、昔の広告キャンペーンでよく言われていたように、「将来失望しないように今できることをすぐしましょう」ということになります。

いつも、このポリティカルリスクインデックスをご購読いただきありがとうございます。今回のエディションも、皆さまにとって興味深く、価値ある情報となりましたら幸いです。

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