現在の保険マーケットでの財物利益保険のキャパシティはUSD5B(約6,000億円)となっています。
一方、近年アジアおよび世界において発生した、幾つかの巨大自然災害にもかかわらず、火災利益保険の保険料率は引き続き低減しつづけてきたものの、本年年初から、一部の業種や個別企業における損害履歴によっては、保険料率の上昇や引受補償内容の削減が見られ、いわゆる保険マーケットのハード化の局面に入っていると認識しています。
ご参考までに、財物利益保険を例として、2000年から2018年までの自然災害、人的災害別の年間の巨大損害の推移をご紹介いたします。
一方、保険マーケットにおける組織面での変化として、以下のとおり、これまで大型の保険会社間で M&A の動きが多く見られます:
- AXA & XL & Catlin
- Hartford & Navigators
- AIG & Validus
- AWAC & Fairfax
- Sompo & Endurance
さらにアジアでは、各国保険規制も強化されつつある中、保険会社における事業費も増加傾向にあります。その折、アジアにおける状況は以下のとおりと理解します:
保険料率:限定的な変動
- 巨大損害の潜在リスクが比較的少なく、損害実績のない企業:前年比△5%~+5%。ただしロンドン再保険マーケットはそれ以上の料率アップを要求するケースあり。
- 巨大損害の潜在リスクが比較的大きい国で、損害実績のない企業:前年比0~15%。
- 巨大損害の潜在リスクが比較的大きい国で、損害実績のある企業:前年比15~25%(大規模損害があった場合はそれ以上)。
キャパシティ:安定的
- 保険マーケットにおいて提供できるキャパシティは安定して高いレベルを維持。
- ロンドンマーケットでは、リストラクチャリングのプロセスが見られる。
- 現状は調達可能なキャパシティのピーク期を迎えていると認識。
ストラクチャー(契約構成):限定的な変動
- 保険マーケットの更なる変動がある場合には、共同保険でない、レイヤープログラム方式による契約構成の方が、安定的な保険料率の提供が可能と認識。
- より多くのキャパシティが必要となる契約では、保険会社間の競争の原理が限定的となる可能性あり。
補償内容:限定的な変動
- 免責金額や限度額を見直す傾向あり。
- 過去数年に渡って提供されてきた特約条項を削除するケースあり。
- 構外利益保険の拡張担保について、より精査する傾向あり。
- 国際保険マーケットは巨大自然災害による集積リスクを懸念。個別企業ごとの巨大損害に対するリスクコントロール状況を、保険引受時に慎重に検証。
今後の安定した契約のために、過去に利用されていない保険マーケットやキャパシティがあるかどうかが重要であり、更なる保険料率低減を検証するために、現在の再保険ポートフォリオやキャパシティの再構築を検討することも肝要と考えます。特に、メジャーな国際保険マーケットは毎年見積もり取得を打診されてきており、また新保険マーケットではなかなかキャパシティ提供は困難な状況が見られます。
尚、直近のWTWにおける見解では、中国や台湾の現地保険マーケットでは、契約更新時の火災利益保険の保険料率が引き続き低減するケースが見られ、中国および台湾と、国際保険マーケットの間に異なるマーケットトレンドが発生していると理解しています。この動きは引き続きウォッチしていきます。
このような保険マーケット環境の変化において、企業各社による今後の対応として、以下の方法が重要と考えます:
- 早期のブローカーエンゲージメント:未開拓マーケットへの早期アクセスを検討。プレースメントのために詳細なレビューが必要。
- リスク品質の高い情報:企業における品質の高いリスク管理状況のマーケットへの十分な提供が重要。そのためのリスク評価、分析が重要。
- 事故情報:リスク軽減および防止のためのストーリー作りが重要。
- プログラム設計:マーケットアップデートに応じたストラクチャーの再構築が肝要。
