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世界最大級の年金基金群の資産が23.6兆米ドルの新記録達成

2022年9月15日

Investments
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【プレスリリース / 東京】 2022年9月15日(木)-  シンキング・アヘッド・インスティテュート(※注:WTWが設立した非営利組織)と国際的な資産運用専門誌である米国のPensions&Investmentsが共同で実施した調査によると、世界上位300社の年金基金の運用資産総額(AUM)は、2021年に8.9%増加し、合計23.6兆米ドルに達しました。この調査では、世界の年金基金業界の傾向に焦点を当て、これら基金の特徴がどう変化したかについての情報を提供しています。

運用資産総額は過去最高を記録していますが、2020年の11.5%の成長率から2021年には8.9%へと成長が鈍化しています。これは、2020年にかけて資産市場が非常に好調であったことから想定されたものでした。しかし、直近のパフォーマンスは十分に高く、2016年から2021年の5年間の累積成長率は50.2%に及んでいます。

シンキング・アヘッド・インスティテュートの共同代表者であるマリサ・ホールは、今回の調査から得られた示唆を次のように振り返ります。

「これは2つの側面のある話です。一方では、世界の主要な年金基金が資産額の新記録を達成したことは世界的なパンデミックをものともしない楽観主義を物語っています。しかし、他方では、成長が鈍化し、長期的な経済予測に黄色信号がともり始めています。

今後、インフレ率の上昇とそれに伴う中央銀行の措置により、世界的な成長が鈍化し、その結果、年金基金の積立状況が長期的に危うくなる可能性があります。

年金基金もまた、あらゆる側面から非常に大きなガバナンスの圧力にさらされており、一部の地域ではESGの政治利用が進み、より実質的な気候変動対策を早急にとることを求める声が高まっています。こうした長期的な構造変化に加え、短期的な経済的圧力が加わることで、短期的な財務の回復力と、長期的な財務及びクライメット・サステナビリティ(気候の持続可能性)のバランスをとることが難しくなるでしょう。」

世界上位300社の年金基金の資産に占める北米の割合は、現在45.6%となっており、2020年末の41.7%から上昇しました。欧州の年金基金が25.9%、アジア太平洋が25.5%を占め、残りの4%は中南米とアフリカが占めています。

北米の世界シェア拡大は、投資資産の増加率(年率換算)が9.2%と最も高かったことが大きな要因であり、欧州(8.3%増)、アジア太平洋(8.0%増)、中南米・アフリカ(3.9%増)が続きました。

米国は現在、世界上位300社の年金基金の運用資産総額の39.6%を占め、ランキングのほぼ半数の148の基金数を擁しています。米国に続き、ランキング入りしている年金基金の数が多い国は、英国(23)、カナダ(18)、オーストラリア(15)、オランダ(12)、日本(11)です。2016年以降、合計37の基金が新たにランキング入りし、純増数が最も多かったのは米国(14基金)、純減数が最も多かったのは日本(5基金)でした。同期間、英国は3基金の純減、スイスは3基金の純増となりました。

上位300基金のうち、確定給付(DB)の資産残高は、全体の63.5%と引き続き存在感を示しています。しかし、確定拠出(DC)(23.8%)、リザーブファンド(注:国が将来の債務への対処に充てるための準備基金)(11.8%)、ハイブリッドファンド資産(0.9%)の資産が徐々に増加しているため、確定給付(DB)のシェアはここ数年緩やかに減少しています。

DBは、北米とアジア太平洋で大勢を占めており、それぞれ 72.7%、65.2%となっています。また、欧州でも DB が資産の51%と大半を占めている一方で、そのほかの地域では DC が多くを占めており、DB は 17.9%に過ぎません。

今回の調査によると、当年度の上位300基金全体の成長が8.9%に対して上位20基金の成長は6.9%であったことから、上位20基金が運用総資産額に占める割合は41.0%となり、前年度の41.8%からやや減少しました。しかし、長期的に見ると、上位300基金の過去5年の年間平均成長率が8.5%なのに対し、上位20基金は8.8%と、より高い成長率を示しています。上位20基金は、平均すると資産の約53.5%を株式、27.9%を債券、18.6%をオルタナティブと現金に投資しています。

マリサ・ホールは次のように結論付けています。

「アセット・アロケーションは、長期的な構造変化に対応するように変化しています。プライベート・マーケットへのアロケーションは前年度に比べて減少しましたが、これは主に短期的なインフレと利上げの懸念によるものであると考えられます。持続可能な経済成長の新しいモデルに対応するための新規投資の必要性を反映し、プライベート・マーケットは長期的に大きく拡大し続けるものと思われます。

年金基金理事会の議題は、グローバルな市場と経済が直面する複雑な戦略的課題への指針となっています。世界最大級の年金基金の年次報告書を読むことは、こうした大きな課題に対する潜在的な解決策を学ぶことでもあると言えるでしょう。大多数の年金基金は、市場のボラティリティが高まることを懸念し、特に世界経済の減速を背景に、多様な投資手法をさらに検討しています。そして、ほとんどの年金基金が、持続可能な価値を確保するために、コーポレート・ガバナンスのベスト・プラクティスを求めています。

明らかなことは、年金が、世界における実質的な課題の克服に貢献する力となり得るだけでなく、今後数十年にわたって私たち全員が直面する大きな問題のバロメーターともなり得ることです。」

WTWのインベストメント部門の日本の責任者である木村倫啓は次のように述べます。

「日本の年金に関しても、経済環境の不透明性等の懸念から、より耐性の期待される分散化ポートフォリオ等を求める動きは高まっています。また、長期的な社会構造等の変化を見据えたサステナブル投資へのニーズもさらに拡大していくことでしょう。こうしたポートフォリオの進化には投資家のガバナンスの進化も求められます。グローバル有数の年金基金の多くがガバナンスのベストプラクティスを追求していますが、規模に関わらず、ポートフォリオの進化を求める多くの年金において、ガバナンスをどう進化させていくかを併せて考えていく必要があるでしょう。」

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、1.7兆ドルを超える運用資産残高を有し、依然として世界最大の年金基金となっており、2002年以来、世界首位を維持しています。

年金基金トップ20(単位:百万米ドル)

図1:年金基金トップ20(単位:百万米ドル)
順位 基金名 総資産額
1 年金積立金管理運用独立行政法人 日本 $1,730.900
2 Government Pension Fund ノルウェー $1,437.111
3 National Pension 韓国 $797.968
4 Federal Retirement Thrift 米国 $774.176
5 ABP オランダ $630.358
6 California Public Employees 米国 $496.820
7 Canada Pension カナダ $426.7461
8 National Social Security 中国 $406.7872
9 Central Provident Fund シンガポール $374.990
10 PFZW オランダ $315.467
11 California State Teachers 米国 $313.940
12 New York State Common 米国 $267.756
13 New York City Retirement 米国 $266.702
14 地方公務員共済組合連合会 日本 $248.572
15 Employees Provident Fund マレーシア $242.602
16 Florida State Board 米国 $213.792
17 Texas Teachers 米国 $196.727
18 Ontario Teachers カナダ $191.140
19 National Wealth Fund ロシア $180.6903
20 AustralianSuper オーストラリア $169.0554

1 2022年3月31日現在

2 推定値

3 2022年1月1日現在

4 2021年6月30日現在

シンキング・アヘッド・インスティテュートについて

シンキング・アヘッド・インスティテュートは、2015年1月に設立された非営利の運用調査及びイノベーションのためのグローバルな会員グループです。持続可能な未来のために資本を活用していくことに取り組んでいる機関投資家のアセット・オーナー及びアセットマネージャーから構成されています。世界中に55以上のメンバーを持ち、合計で16兆米ドル以上の資産に対し責任を負っており、2002年に設立されたWTWのインベストメント部門のシンキング・アヘッド・グループをその前身としています。

WTWのインベストメント部門について

WTWのインベストメント部門は、リスク評価、戦略的アセット・アロケーション、受託者管理、投資マネージャー選定に関する専門知識を通じて、機関投資家に対し経済的価値を提供することを目指しています。全世界で900人以上の社員、全世界で1,000社以上の顧客、4兆7,000億米ドル以上の投資顧問資産、1,870億米ドルの運用資産を擁しています。

WTWについて

WTW(NASDAQ:WTW)は、企業に対し、人材、リスク、資本の分野でデータと洞察主導のソリューションを提供しています。 世界140の国と市場においてサービスを提供しているグローバルな視点とローカルな専門知識を活用し、企業戦略の進展、組織のレジリエンス強化、従業員のモチベーション向上、パフォーマンスの最大化を支援します。

私たちはお客様と緊密に協力して、持続可能な成功への機会を見つけ出し、あなたを動かす視点を提供します。

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