退職給付制度の第三の選択肢:リスク分担型企業年金制度(CDC)
リスク分担型企業年金制度(CDC: Collective DC とも呼ばれます)は、リスクマネジメントを実現できる画期的な制度
- 企業にとっては、DBのリスクを消滅できる画期的な制度です。
- 従業員にとっては、これまでのDCよりも高い水準の給付、より安定した給付が期待できます。
多国籍企業は新しいソリューションを求めている
- 従業員は退職後の資金の確保について関心を持っている
- 従業員の63%が定年後の公的年金の給付が現在より悪化すると懸念しています。
- DBがDCにとって代わられつつある
- 過去5年間では、DCを採用する企業が82%増加しています(DBも併存)。
- 現行のDCには、拠出額に制限がある
- このため、多くの企業がDBとDCの併用を余儀なくされています。
- 現行のDCでは期待通りの結果を得ることは難しい
- 現行のDCでは大部分を現預金など元本確保型の商品に投資しています。
リスク分担型企業年金制度は新しい第三の選択肢
資産をまとめて管理
- リスク分担型企業年金制度では資産をまとめて共同で運用します。
拠出額は固定
- リスク分担型企業年金制度の拠出額は固定で、企業が積立不足分を補填する必要はありません(予め、将来のリスクを織り込んで拠出額を算定している)。
目標とする給付
- リスク分担型企業年金制度では目標とする給付を設定しており、従業員は制度の積立状況に応じて、この目標給付額から増減された額を受け取ることができます。
なぜリスク分担型企業年金制度なのか?
企業にとってはリスクがない
企業の拠出額は固定されており、企業にとって、運用成果や年金数理、積立計画に係るリスクを負う必要がありません。
退職給付債務の認識が不要
リスク分担型企業年金制度は少なくとも国際会計基準ならび日本会計基準ではDCとして取り扱われます。
年金資産の効率的な運用とスケールメリットにより運用実績の向上が期待できる
投資に関する意思決定はコミッティーでなされるため個人で運用を行う必要がありません。
従業員にとっては、将来の給付額が予測できる
現行のDCに比べて給付の変動が少ない制度です。
2020年には、日本で初めて外資系企業がリスク分担型企業年金制度を実施
- リスク分担型企業年金制度が企業と従業員双方にとって期待できる新しい選択肢であることは間違いありません。
- 企業は現行の制度を見直し、この新しい選択肢をどう活用するかを検討されることをお勧めします。
注釈
*DBとは、確定給付企業年金制度、厚生年金基金、退職一時金制度等を指す
*DCとは、確定拠出年金を指す
*CDC導入の検討にあたっては、今後のDBおよびDCの法令改正等の影響について留意が必要です。
執筆者プロフィール
リタイアメント部門
年金業界で20年のコンサルティング経験を持ち、制度設計、de-risking、年金財政、投資、ガバナンス等に幅広く従事。東京オフィス勤務以前はパリとニューヨークにて、グローバルアクチュアリー、M&A、インターナショナル年金制度などの面で多国籍企業の年金や福利厚生プログラムをサポート。米国アクチュアリー会正会員、 CERA(Chartered Enterprise Risk Actuary)、CFA(CFA協会認定証券アナリスト)。
リタイアメント部門統括
リタイアメント部門にて、退職給付制度の設計支援、退職給付会計、年金財政、年金ALMなど退職給付全般のコンサルティング業務に従事。M&A関連では、退職給付制度に関するデューデリジェンス、PMIにおける退職給付制度の再構築支援などを行う。年金数理人。日本アクチュアリー会正会員。国際アクチュアリー会年金会計委員会委員。
リタイアメント部門
企業年金のALMを中心に、制度設計、退職給付会計、M&Aに関わる退職給付制度のデューデリジェンス等に従事。2020年と2021年には、外資系企業として初めてのリスク分担型企業年金制度の導入コンサルティングを2件担当。年金数理人。日本アクチュアリー会正会員。日本証券アナリスト協会検定会員。