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執筆者 山下 留奈 カロリーナ | 12月 2018年

人事関係者で構成される世界最大規模の団体である人材マネジメント協会SHRM(世界約28.5万会員)が2002年、5,000人の人事担当者を対象に、近年の人事に関する研究内容をどの程度把握しているかについての調査を実施しました。報酬や福利厚生などについては、最新研究結果と人事担当者の理解が概ね一致していた一方で、採用時の心理検査については大きな認識の乖離が認められました。以降、同様の調査を繰り返し実施しましたが、人事担当者の多くが心理検査については専門的で学術的な知識が不十分であるとの結論が確認されています。

この傾向は日本でも同様に確認されている状況です。現在日本における心理検査の市場規模は、約70~80億円と推定されており100種類を超える心理検査が存在します(日本の人事部「人事支援サービスの傾向と選び方」2018年10月9日)。科学的な妥当性の精度の高さより受検者の特徴を単純化する平易な心理検査を優先する傾向が、少なくない企業で見られるようです。但し、採用選考において妥当性の精度の低い心理検査を利用すると、相応しくない人物を採用したり、本来は職務遂行能力が高い人物を見落としてしまうといったリスクが発生します。こうしたリスクを最小化し職場において高い実績を上げ得るパーソナリティをより正確に把握するためには、心理検査について正確な理解をもつ必要があります。では、どのような心理検査を活用すれば良いのでしょうか。本稿では、心理検査の選択において特に重要な要件について述べさせていただきます。

  1. 心理検査の測定項目
  2. 心理検査は対象者の行動特性を測定・予測するものですが、後天的には大きく変えることが難しいとされる資質、動機傾向や価値観を精緻に評価するかというのが、重要な見るべきポイントとなります。多くの心理検査は、問題分析能力、几帳面さ、コミュニケーション能力といった研鑽を積めば短期間で獲得することが可能な「顕在化された行動特性」を測定します。一方、多くの心理学研究により、変化に対する柔軟性、成功への野心、自己肯定感など「先天性の強い項目」を評価する心理検査は優れていると見做されています。更に、受検者の才能(何が得意なのか)と動機(何を楽しめるのか)を独立して評価できる検査は有用です。加えて、社内外のネットワークを構築する力、テクノロジーへの指向性といった、21世紀のグローバル企業においてより求められる特性についても評価が可能であるという点が重要です。

  3. 嘘発見力
  4. 万一受験者が、「こうありたい」と思う人物像に寄せて回答したり、偽った回答をした場合に、それらを「見抜く」ことができる技術的な仕掛けが複数あるかどうかも、大きなポイントとなります。最も効果的な仕組みは、「Rating」と「Ranking」を組み合わせた質問形式です。「Rating」とは、複数の質問に対し同意する程度を何段階かに分けて答える自由回答形式の質問形式です。「Ranking」は、自身が最も当てはまると思う順に順位付けするものです。この2つの質問形式を併用することによって、受検者が偽った回答をしにくくなり、また偽った回答を特定することができます。因みに多くの心理検査は「Rating」形式のみで質問するため、受検者は自身の強みをアピールして意図的に回答を操作することが可能となります。また、両方式を使用しても、心理検査は自己申告形式のものですので、そもそも受検者が自分自身に対してどのくらい厳しいか甘いかというのは、最終結果に多少影響を与えます。これを補完する為に、心理検査結果に加えて、受検者の「回答傾向」に対する参考情報があわせて提供されることが有用です。

  5. ベンチマーク
  6. 心理検査においては、受検者の職務内容、階層などの基準値と受験者個人の結果をベンチマークすることにより、より相対的かつ客観的な評価を得ることができます。言うまでもなく、新卒社員と役員の検査結果を比較しても意味がありません。正確な評価を実施するためには、大量に蓄積されたデータに基づいた統計的なベンチマークを用いて、受検者一人一人を評価することが重要です。

  7. 信頼性と妥当性
  8. 「信頼性」は、心理検査の精度と一貫性の尺度です。信頼性とは、同じ心理検査を繰り返し実施した際のそれぞれの結果や、心理検査を異なる手法(パソコンと紙テスト等)で行った場合のそれぞれの結果を比較することによって算出されます。多くの心理検査会社が自社の強みとして「高い信頼性」をアピールしていますが、実は信頼性スコアは比較的容易に達成できる基準です。

心理検査において最も重要な基準は「妥当性」です。妥当性とは、心理検査の結果と実際の職場でのパフォーマンスの相関性の高さを示しています。妥当性スコアは通常1からマイナス1の間で表されており、この数値が高いほど(1に近づけば近づくほど)、精度高く職場でのパフォーマンスを予測できるという意味合いになります。例えば、能力検査の妥当性は約0.5、採用面接の妥当性は約0.2、推薦状や学歴はより低い0.1の妥当性であると論じられています(Schmidt, F. L., & Hunter, J. E. (1998). “The validity and utility of selection methods in personnel psychology: Practical and theoretical implications of 85 years of research. Psychological Bulletin, 124(2), 262-274.”) 。従来心理検査においては、0.3程度の妥当性が担保されるとその心理検査は充分に活用できるとされています。

但し妥当性の正確な計測は容易ではないので、心理検査を提供する会社が自社検査手法の妥当性スコアを開示したとしても、そのスコアがどのような手法を用いてどのように測定されたかについては十分留意すべきです。スコアの信憑性を見分けるには、検査実施団体が信頼できる第三者機関(英国心理学協会等)であるかを確認することが推奨されます。

ウイリス・タワーズワトソンが提供する心理検査(Saville Wave)の妥当性スコアは、下記の大規模な研究プロジェクトによって検証されました。300人以上の被験者が27種類の心理検査を受検し、その結果を職場でのパフォーマンスと比較するという研究プロジェクトによって検証されました。職場でのパフォーマンス評価は、上司評価を含む360度評価結果によるものです。結果、Saville Waveは、英国心理学協会により、史上最大の妥当性スコア(0.57)を獲得しました。

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