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特集、論稿、出版物 | ウイリス・タワーズワトソン人事コンサルティング ニュースレター

退職に関する社員意識の変化

~ 2017 Global Benefits Attitudes Survey(GBA調査)結果より ~

Retirement
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執筆者 西本 敦子 | 2018年8月7日

ウイリス・タワーズワトソンでは、隔年でGlobal Benefits Attitudes Survey(以下、GBA調査という)を実施しており、2017年は日本を含む世界22か国の中・大規模企業で雇用されている従業員を対象に実施し、日本では約1,500名の回答を得られました。GBA調査では福利厚生(ベネフィット)の様々な分野を対象としていますが、ここではRetirement(退職)に関連する社員の意識等について、日本の調査結果から主たるファインディングをご紹介します。

ウイリス・タワーズワトソンでは、隔年でGlobal Benefits Attitudes Survey(以下、GBA調査という)を実施しており、2017年は日本を含む世界22か国の中・大規模企業で雇用されている従業員を対象に実施し、日本では約1,500名の回答を得られました。

GBA調査では福利厚生(ベネフィット)の様々な分野を対象としていますが、ここではRetirement(退職)に関連する社員の意識等について、日本の調査結果から主たるファインディングをご紹介します。

【図表1:主な調査結果】

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図表1:主な調査結果

  1. 年齢に関係なく、引退(リタイア)後の安定的な生活に対する関心は高まっている
    リタイア後に安定した生活を送ることができるかという社員の関心は年々高まっており、その傾向は特に日本で顕著です。「リタイア後の安定した生活の確保が、この数年でより大きな関心事となってきている」と回答した人の割合を2013年結果と比較してみると、グローバル結果では23%アップ(46% ⇒ 69%)であり、日本の調査結果では39%アップ(28% ⇒ 67%)となっています。

    【図表2: リタイア後の安定した生活への関心が世界的に高まっている(各国の経年的変化)】

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    図表2: リタイア後の安定した生活への関心が世界的に高まっている(各国の経年的変化)

    日本の調査結果を世代別にみると、年齢に関係なく高い関心が示されていることがわかります。

    【図表3: リタイア後の安定した生活への関心が高まっている(日本の結果)】

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    図表3: リタイア後の安定した生活への関心が高まっている(日本の結果)

  2. 引退(リタイア)後への安心感は低下し続けている
    日本の調査結果によると、社員は現在の経済状況よりも長期的な経済的不安を感じています。また、リタイア後の生活資金について、退職後25年後も十分な資金があると回答した人は17%に過ぎません。一方で、社会保障の将来見通しの厳しさなどから、退職後の経済面での安心感は年々低下しており、将来の自身の経済力への不安は増大しているといえます。「自分たちの世代は両親の世代よりリタイア後の生活が悪くなっているだろう」との回答が71%に達しています。

    【図表4: リタイア後への安心感の低下】

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    図表4: リタイア後への安心感の低下

  3. 半数近い社員が70歳以降も働くつもりである
    日本の調査結果によると、70歳まで働くつもりの回答者は45%であり、諸外国に比べても高い割合を示しています。何歳まで現役で働く意思があるかについては、国別に大きく異なります。 これは国によって異なる社会保障のあり方や、国民性など、さまざまな要因が考えられます。

    【図表5: 70歳以降も働くつもりの人は各国と比べて多い】

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    図表5: 70歳以降も働くつもりの人は各国と比べて多い

    日本の調査結果を世代別にみると、70歳を過ぎても働きたいと考えている社員は、いずれの年齢層でも半数近くにのぼり、特に低所得者層ほどその傾向が強いといえます。

    【図表6: いずれのカテゴリーでも70歳以降も働くつもりの人は半数に近い】

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    図表6: いずれのカテゴリーでも70歳以降も働くつもりの人は半数に近い
    また、半数近くの社員(47%)が段階的なリタイアを希望しており、特に仕事へのエンゲージメントの高い層が段階的リタイアへの志向が高いことがわかります。

    【図表7: エンゲージメントの高い人ほど段階的なリタイアを望む】

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    図表7: エンゲージメントの高い人ほど段階的なリタイアを望む
  4. 社員は退職金制度を重要視しており、手厚い給付制度ほど新規採用やリテンションに大きく貢献する
    日本の調査結果によると、退職金をリタイア後の備えの主たる財源であると回答した人の割合は2013年から半減しており、性別、年代を問わず30%以下にとどまっています。 低所得者層ほど、その傾向は大きい結果となっています。

    【図表8: 退職金制度をリタイア後の備えの主たる財源として期待する人は多くない】

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    図表8: 退職金制度をリタイア後の備えの主たる財源として期待する人は多くない

    前述のように、リタイア後の経済面での安心感が薄れ、退職金をリタイア後の主たる財源になると期待できなくなっている状況において、リタイア後の安定した生活を求める若年層は増加しています。将来の退職金を確保するためであれば、現在の支出が増加してもよいと考える社員が、若年層でも多く見受けられます。退職金制度は社員のリテンションにつながるだけでなく、新規採用者が企業を評価する際の大きな判断材料となるといえるでしょう。

    【図表9: 退職金を確保するために現在の支出が増加してもよいと考える人は多い】

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    図表9: 退職金を確保するために現在の支出が増加してもよいと考える人は多い
  5. 引退(リタイア)後に備えた貯蓄 が最優先事項となるのは40歳代、50歳代から。
    日本の調査結果によると、リタイア後への備えを本格的に始められるのは、住宅ローンや教育費がひと段落する40歳代、50歳代からであり、若い世代では、一般的な生活費やいざというときに備えた貯蓄が支出の大部分を占めています。

    【図表10: 支出の優先事項は年代により異なる】

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    図表10: 支出の優先事項は年代により異なる

企業が検討すべきこと
ここまで、社員の考えについて見てきましたが、企業が社員に対してできることは何でしょうか。リタイア後の安定した生活に社員の関心がより高まり、70歳を超えても働きたいという社員の増加、また退職金を確保するためには、現在の支出を増やしてもよいと考える社員が増えている中で、現行の退職金制度を含む各種福利厚生制度がこれらの要望にどこまで応えられる内容であるかを見直す必要があるでしょう。 

さらに、退職給付制度に確定拠出年金制度(DC制度)を導入する企業が増加し、リタイア後の資金の管理、運用の責任は企業から個人へと移行しつつあります。制度内容の理解、自助による老後資金準備を促進する一方、社員が適切な判断を下せるよう、十分な教育的サポートが提供されているか、適したツールが使われているかを見直すことも大切です。

充実した退職金制度は、社員のエンゲージメントの強化に役立ち、リテンションや新規採用時の大きな魅力となるなど、人材確保にも効果があります。年代や個人の経済状況により多様化する社員のニーズを捉え、それに応えられる柔軟さを備えた制度設計ができれば、リタイア後の安定した生活につながる制度を提供できるのではないでしょうか。

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